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黒海艦隊旗艦『モスクワ』が沈没、ウクライナが放ったミサイルによるものか
まず大前提として、今回ロシアの黒海艦隊旗艦『モスクワ』に対艦ミサイルを2発当て、撃沈したとのウクライナ側主張に対し、ロシアのメディアは"船内での火災が原因、その影響で弾薬に引火し爆発、曳航中に沈没"と主張している。その為、どちらの主張が正しいかは現時点で断定はできない。しかし4/15アメリカの米国防総省高官が「モスクワはウクライナのミサイルで撃沈を確認」とメディア向けに発表していることから、ウクライナ側の主張に信憑性があると考えられる。
撃沈された『モスクワ』とはどのような船なのか
排水量 | 12,490トン |
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長さ | 186.4 m |
幅 | 20.8 m |
推進器 | ガスタービンエンジン4基 |
最大速力 | 32キロノット |
航続距離 | 10000海里 |
乗員 | 510名 |
所属 | 黒海艦隊 |
ロシアが常時運用している艦隊は合計で5つ。
- 北方艦隊
- 太平洋艦隊
- バルト艦隊
- 黒海艦隊
- カスピ小艦隊
撃沈された『モスクワ』とは、5つある艦隊のうち『黒海艦隊』の旗艦である。黒海はウクライナの南に位置する海で、黒海艦隊は所属船舶約40隻、稼働常時20隻の大規模な艦隊であり、今回のウクライナ侵攻において海上から地上部隊の支援を行っている。
旗艦とは、その艦隊における司令塔であり象徴ともいえる存在。多くの場合旗艦にはその艦隊の司令官が乗船しており、指示も旗艦から出される場合が多い。その為、旗艦の周囲は護衛となる船舶でガチガチに固められているのが常である。
それだけにミサイルにて旗艦を攻撃するというのは、ハリネズミのような艦隊の対空防御を抜く必要があり、高い速度・攻撃妨害能力等の高い攻撃力が必要になる。
では今回『モスクワ』攻撃に使用された新型ミサイル『ネプチューン』とはどのようなものだったのか。
新型ミサイル『ネプチューン』の性能とは
原産国 | ウクライナ |
運用開始 | 2021年 |
ミサイルの長さ | 〜4.4 m |
ミサイルの長さ(ブースター付き) | 5.05メートル |
ミサイルの直径 | 〜0.4 m |
翼幅 | 〜1.3 m |
ミサイルの重量 | 870 kg |
弾頭重量 | 150kg |
弾頭タイプ | HE-FRAG |
射程距離 | 最大280km |
上記表が公表されている『ネプチューン』の性能であり、運用開始されてからまだ1年という新型兵器ということがわかる。
しかしながら原型となったモデルは意外にも古く、ソ連(現ロシア)製の対艦ミサイルKh-35、1983年に運用開始されたミサイルである。
2015年にて初公表されたネプチューンは、ウクライナの企業がKh-35に近代化改修を加えたものであり、レーダー機能やエンジンを一新させている。
また元々は空対艦、艦対艦ミサイルとして運用されていたKh-35とは違い、地上の車両から発射できるよう改修が行われており、ウクライナは独自の湾岸防衛システムを構築している
RK-360MC ネプチューン沿岸防衛システムと呼ばれ、トラックをベースとしたUSPU-360発射機搭載車、ミサイル4基、TZM-360輸送/再装填車、RCP-360指揮統制車、特殊貨物車にて運用されている。正式に発表はされていないが、今回の発射も上記沿岸防衛システムから発射されたものと考えられる。
性能面でみると、射程は280kg、重量は870kgと対艦ミサイルとしては比較的小型なことがわかる。このミサイルの開発時主目標も基準排水量5,000t程度の中型艦となっている。
巡航速度は正式に公表はされていないが、およそ時速700km~1000kmの亜音速だとみられている。
電子性能に関しては不明な点が多いが、突出した性能が無いミサイルでありどのようにして旗艦である『モスクワ』に2発も直撃させることができたのか。
そこには本日に至るまでドローン程度の襲撃しかされていなかったロシア側艦隊に、油断もしくは致命的な防空システムの欠陥があったのではないかと推測される。
今後黒海艦隊は容易に湾に近づくことはできなくなり、ウクライナ側にとって艦隊への抑止力として最良の結果を得られたと考えられる。
トルコ製ドローン バイラクタルTB2も今回の撃沈に関与か
現在ウクライナで運用されているバイラクタルTB2はトルコから購入したものであり、用途は偵察及び攻撃。
今回の『モスクワ』撃沈において、バイラクタルTB2が囮として使われそれに釣られた艦艇にミサイルを当てた、との未確認ニュースが流れているが真偽の程は現時点で不明。
『ネプチューン』北朝鮮にも配備されている可能性 日本への危険は?
今回活躍した『ネプチューン』ミサイルが北朝鮮に配備されているという情報がある。
ネプチューンのコピーと思われるミサイルは、北朝鮮で2014年に最初に確認されました。地元ではKumsong3(Venus 3 )として知られています)。当初、北朝鮮はロシアのKh-35EまたはKh-35UEミサイルを取得したと考えられていました。
Military-todayより引用(英語原文)
しかし、綿密な調査の結果、それはロシアのミサイルではなく、ウクライナのネプチューンに非常に似通っているように見えます。
2015年に最初のテスト打ち上げを行い、情報によると200kmの射程範囲を示しました。
2017年、別のテスト打ち上げ中に、Kumsong3は240kmの範囲を示しました。ウクライナで開発中のミサイルが、なぜ北朝鮮に現れ、またテストされたかは不明です。この北朝鮮のミサイルがどのように開発されたか、まだ情報がハッキリしていません。情報の1つとして、ウクライナが北朝鮮のKumsong3対艦ミサイルの開発に貢献した可能性があります。ウクライナは実際には世界の軍事生産国のトップ10に入っており、北朝鮮よりもはるかに発展した武器産業を持っています。また、ウクライナは以前、ロシア経由で北朝鮮の弾道ミサイルにエンジンを供給していました。この事実は、ウクライナの宇宙機関と韓国の諜報機関によって確認されました。
元々ウクライナは兵器輸出をしており、その中のラインナップの一つとして今回使用された『ネプチューン』があったようだ。
北朝鮮は軍備の詳細を公表していないが、Kumsong3はネプチューンの性能・外観ともに極めて近く同等の性能があると考えるのが自然である。そこで日本の国防という観点において、このような強力なミサイルが北朝鮮に配備されていることについて不安を覚えてしまいそうだが、先に述べたようにネプチューンは特別際立った性能があるわけではない為、防空能力に長ける日本の大きな脅威とはなりえないと考えられる。
だがしかし北朝鮮の兵器の近代化の一端が垣間見えたのは確かで、このような世界情勢の中で日本も決して油断してはならない。